トマトの育て方 養液隔離栽培 もみ殻くん炭の活用による循環型農業への取り組み 新潟県糸魚川市

トマトの育て方 養液隔離栽培 もみ殻くん炭の活用による循環型農業への取り組み 新潟県糸魚川市

 

あぐりいといがわ自慢の商品のひとつ、樹熟金線トマト。
このトマトの栽培方法には「養液隔離栽培」を採用しています。おそらく耳慣れないであろう「養液隔離栽培」について、説明していきます。


養液栽培とは 潅水施肥の省力化

まずは、養液栽培についてです。

作物の生育に必要な水分とともに、栄養分も液状にして「養液」として与えていくのが「養液栽培」です。固形状の肥料を散布・置き肥するよりも吸収性・即効性に優れています。

あぐりいといがわでは、養液管理をコンピューターで行っています。水分と養分の濃度、一日当たり・一回当たりの供給量などを設定することにより、養液の供給(潅水施肥)が自動で行われます。タンクから送られた養液は株もとに這わされたチューブからポタポタと落ちる仕組み。さながら人に栄養を与える点滴のようです()。


ポタポタと少しずつ……トマトへの点滴のようです。


別棟から地下配管を通って……自社施工です。

すべてコンピューターが行うとはいえ相手は生き物です。気温や日照などにより株ごとに個体差がでたり、思うような生育状態にならないこともしばしば。そしてコンピューターのトラブルや故障もつきもの。手間を省力化してくれる便利な設備を使用してはいても、それはあくまで人間を補助してくれるもの。イレギュラーな事態をリカバリーできる「農家」としての、トマトを観察する目や積み重ねてきた知識と経験が重要となります。


隔離栽培とは 生理障害を防ぐ

続いて、隔離栽培についてです。

地面と隔離された容器に固形状の培地を入れて作物を育てるのが「隔離栽培」です。植木鉢やプランターを使用することをイメージするとわかりやすいでしょう。一方、畑の土に直接植え付ける方法は「地植え栽培」といいます。


地面から隔離されています……こちらも自社施工。

隔離栽培では、ピートモスと呼ばれる苔類を原料とする資材や火山灰など、生来の土を使用しないのが一般的です。
隔離栽培の最大のメリットは「土壌起因による生育障害、病害虫被害の低減効果」です。

元々畑の土には様々な栄養成分、微生物が存在しています。肥沃な土や有効微生物は作物に良い影響をもたらしてくれるものですが、必ずしも好影響をもたらしてくれるものばかりではありません。ましてやその影響を人間の力でコントロールすることはなかなかに難しいことです。隔離栽培では、作物の生育に対する不確定要素を極力減らした培地を使用することで、人間によるコントロールが容易になるものです。

ナス科の作物トマトには、「連作障害」という弱点があります。
連作障害とは、同じ畑で同じ作物を作り続けると病害にかかりやすくなる、収穫量が落ちるなどの生育・生理に障害がでることをいいます。土壌中の栄養成分や微生物のバランスが崩れて起きる障害といわれています。元々はこういった要素の少ない培地を使用していても、肥料や農薬などの外的要素を加えた培地では、畑の土と同様の状態となります。
隔離栽培では、容器内の培地を毎年フレッシュなものに入れ替えることが容易なため、連作障害を防ぐことができ、毎年トマトを作ることが可能です。


隔離ベッドにフレッシュな培地を入れ替え。

また、あぐりいといがわでは「隔離ベッド」といわれる方式を採用しており、必要以上の養液は培地中に残留せずに排出される仕組みとなっています。供給量と排出量を分析することにより、トマトの生育過程における養液吸収量などのデータをとることも可能です。

もみ殻の有効活用 オリジナルの培地に

ここからがようやく本題()

「養液隔離栽培」を採用しているあぐりいといがわの一番のポイントは、培地です。
培地には、「いちのまい」のもみ殻を炭化させた「もみ殻くん炭」を使用しています。


できたてのくん炭……「いちのまい」の副産物です。

毎年、稲刈りと同時にできてしまうもみ殻の山。もみ殻はガラスや陶磁器の原料となる成分を含んでいるため腐りにくく、毎年置き場には苦慮しています。
もちろんすべてのもみ殻を使うには至りませんが、少しでも有効活用できないか、資源として循環できないかと考えた結果です。100%もみ殻くん炭の培地はあぐりいといがわオリジナル、あまり例もないそうです。(当初は「チャレンジャーだなぁ」、と皮肉られたりも()


「いちのまい」のもみ殻……毎年約200袋をくん炭に。

毎年冬の農閑期に、専用の釜でくん炭をつくり隔離ベッドに敷きつめていく作業を繰り返し、春のトマト定植を迎えます。秋に作付けが終わったもみ殻くん炭は、田んぼに還して排水性の改善などにも利用しています。


丁寧に均していきます。


冬の間の地味だけど大事な作業です。

米とトマト もみ殻でつなぐ循環型農業

市野々で育まれた「いちのまい」。副産物である「もみ殻」。養液隔離栽培に欠かせない「培地」。その培地で育てた「樹熟金線トマト」。最後に「土壌改良剤」として田んぼに還す。

「もみ殻」でつなぐこんな循環をもっともっと増やしていきたい、増やすための思考を止めない、それも私たちの使命と感じながら、日々の作業に勤しんでいます。
循環により生まれたあぐりいといがわの作物を、多くの人に届け喜んでいただく。その喜びの声、励ましの声が、作物づくりに注ぐ私たちの情熱となる。

そんな循環も目指していきます。

フォトギャラリー


養液のコントロールボックス……壊れたら泣きます。


きめ細かな設定も可能。


奥に養液希釈用の水タンク1,000リットル。


くん炭用釜……意外に優れモノです。


出来上がったくん炭を釜から取り出します。


一晩冷ましたところへダメ押しの水。火事にならないように。


こちらはくん炭の副産物。作物の害虫駆除に使う人も。


空いた釜に次のもみ殻を。


意外に重い……一釜に7袋投入。




満タンになったところで……。


着火用の灯油を吸わせた新聞紙を入れて……。


火入れ。翌日朝まで待ちます。


立ち昇る煙。独特の炭の香りとともに。


まだ慣れていない撮影にどこかぎこちない二人。かっこいいぞ!!