米づくり 88の手間 その34 畦畔の草刈り 終わりのない作業

米づくり 88の手間 その34 畦畔の草刈り 終わりのない作業

「米」という漢字は、ばらばらにすると「八・十・八」の文字からできているように見えます。米を育てるには88の手間がかかることからこの文字ができた、とも言われています。
今回は草刈、特に田んぼの畦畔(あぜ)の草刈りについてのお話しです。


膨大な時間と労力を要する草刈り。全作業に占める草刈りの割合はダントツ。


なぜ草刈りは必要なのか

畑や田んぼに限らず、土さえあればたくましく成長する雑草。それぞれ名前があり、種の保存のために精一杯根を張る彼らを「雑草」と一括りにするのは心苦しいのですが、私たちにとってはやはり厄介者です()
肥料も水も与えていないのに、育てている作物よりも元気な姿の雑草を恨めしく眺めながら、「雑草魂」とはよく言ったものだと感心しきりです。

そんな雑草を退治する方法はいくつかあります。シンプルに「刈る」、除草剤を使用する、防草・抑草シートを使用する、コンクリートで覆う(これはかなり力技())などなど。
どれも一長一短があり、どの方法がベストかは農家さんそれぞれだと思いますが、あぐりいといがわでは、「刈る」を選択しています。

そもそも、あぜの草刈りはなぜ必要なのでしょうか。あぜは日々の管理作業を行うための通路でもあり、「通路の確保」という一面。そして見た目がきれいな「景観の維持」などが想像できるでしょう。それももちろん大切ですが、一番の目的は「害虫の棲みか」を作らないことです。
米の害虫であるカメムシは米のデンプンを吸い、その跡が茶褐色の斑点として残ってしまいます。草刈りで棲みかをなくしカメムシを遠ざけることで被害が減り、農薬を使わずに済むことに繋がります。



カメムシの被害を受けた米。

雑草にも役目がある

厄介者の雑草ですが、あぜが大きく傾斜が急な山間部の田んぼでは、ひとつだけ重要な役割があります。それは「張り巡らされた根によるあぜの保持」ということです。除草剤を使用すると根まで枯れ、保持力を失った土がボロボロと崩れてしまいます。大雨などで一気に崩壊してしまう恐れもあります。根っこは必要だけど葉っぱは伸びないで・・・悩ましい状況です()



立つだけでも大変な急傾斜。根っこが傾斜の維持に一役かっている。

 

機械力が欠かせない重労働

さて、草刈りの方法です。あぐりいといがわでは主に、刈払い機・自走式草刈機・自走二面草刈機(ウィングモア)の3種類の機械を使用しています。あぜが小さく長い直線の多い平野部の田んぼでは、自走式草刈機が主流となっています。あぜの天端部はもちろん、傾斜部も刈ることができるので労働時間は大幅に短縮されます。二面式は天端部・傾斜部を同時に刈っていくため、更に短縮できます。
難点は重いこと。直線は非常に楽ですが、カーブでの方向転換や傾斜の急な部分では腕力を必要とします。傾斜に耐えきれず機械もろとも田んぼに転落という災難もしばしば。操作には慣れと経験が必要です。
機械とはいえ、操るのは人。費やす労力と時間を考えると重労働であることに変わりはありません。



自走式草刈機。直線を刈るのが得意です。



自走二面草刈機(ウィングモア)はその名の通り二面を同時に刈れます。


ウィング部分が可動式なので、傾斜に合わせて角度を調整できます。

平らな部分の数十倍、傾斜部が多い市野々では、刈払い機が重宝します。立つのもやっとなほどの急傾斜に刃物を持って作業するのは過酷かつ危険な作業です。夏の炎天下ともなれば尚更です。しかし、ふと後ろを振り返り、刈り終わったきれいなあぜを見るとなぜか満足感でいっぱいです。
気をよくして「ツルツル、テカテカ」に、となるのが人の性というものですが、これが落とし穴。きれいに短く刈ると逆効果で、かえって雑草が多くなってしまうことがあります。草を刈ったことで日光が当たるようになり草の芽が動き出す、という事態が発生してしまいます。多少長めに残しても伸びる速度は大して変わりません。寝た子を起こさないよう、きれいにするのもほどほどに、がコツです()



急傾斜にエンジンを背負って。熱くも重くもないのは意外。

 

刈らない、を目指して

最近では、ラジコンによる大型の傾斜用草刈機やAIを使った草刈ロボットなども普及し始め、機械のある時代に生まれてよかったとつくづく思いますが、まだまだ大変な作業であることは間違いありません。1年に3~4回、1回目が終わらないうちに2回目が必要になることもままあります。「草刈りができない」が農業を諦める理由のひとつにもなっています。究極の「刈らない」を目指しつつ、省力化を極めた「刈る」を模索し続けることが、山間部の農業を残す道になると信じて、今回のお話しは終わりです。

 

フォトギャラリー

目の前に広がるグリーンモンスター。思わず怯んでしまいます。



伸ばせば伸ばすほど操作性は落ちるが、刈払い機よりは……。


万一の際は手を放して……が、なかなかできずにもろとも、なんてことも。


こんな場所ばかりなら楽ですが……。


本来はこんな感じに使うのがセオリー。ハンドルはあまり伸ばさない。


草刈りはキライじゃない、と豪語する米づくりのリーダー。


草刈り鎌。機械のある時代に生まれた幸せを実感できます。



大人も子どもも、男子も女子も……大人気のアクティビティ「乗用草刈り機」筆者は専らコレ。