夏から秋にかけて食卓を彩る果実のひとつにぶどうがあります。色も味もそれぞれ違う数えきれない種類の中から、好みのぶどうを探すのも楽しみのひとつです。とりわけ、シャインマスカットに代表される、種がなくて皮ごと食べられるぶどうが大人気。人間はどこまで手軽さを求めるのでしょうか……(笑)。
種なしぶどうはどうやってつくるのか
今や主流となりつつある種なしぶどう。ご家庭でぶどう作りにチャレンジされている方も多いのではないでしょうか。そんな方から「売ってるような形にならない」「色がつかない、薄い」「粒が小さい」「種がある」などのご相談をいただくことがあります。ほとんどの場合、行った方がよい作業を端折っていることが多く、「そりゃ、そうなりますよね(笑)、こんな作業があるんです。」とお話しすると、その作業の大変さに驚かれます。もちろん、ご家庭で楽しむだけであれば作り方は千差万別。楽しむことが一番です。
でも、「どうせ作るなら本格的に!」という方に、種なしぶどうができるまでの一般的な作業を紹介していきます。特別な道具も技術も必要ありません。必要なのは……(正解は後ほど)。ぜひチャレンジしてみてください。
※ 汐路ぶどう園での作業を一覧にしました。産地や栽培方法により異なる作業もあります。
※【作業時期】が記載されている作業は汐路ぶどう園での体験が可能です。
№ 作業名 |
内容・目的 |
1. 芽傷処理 | 枝に傷をつけ発芽を促す。 |
2. ぶどう棚修繕 | 切れたぶどう棚(針金)などの修繕。 |
3. 防除1 | |
4. 母枝結束 | 枝をひもで縛って棚に固定する。 |
5. 防除2 | |
6. 草刈1 【4月~11月】 |
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7. 芽かき 【5月上旬】 |
不要な芽を取り除く。 |
8. 防除3 | |
9. 防除4 | |
10. 防除5 | |
11. 草刈2 【4月~11月】 |
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12. 施肥 | 肥料散布。 |
13. 誘引 |
棚に整然と配置、固定して枝の重なりや、風の影響を防ぐ。 |
14. 房作り 【5月下旬~6月上旬】 |
長さ10cm程度あるつぼみを下3cm程度残して取り除く。 |
15. 摘房 | 余分な房を落とす。 |
16. 防除6 | |
17. 草刈3 【4月~11月】 |
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18. ジベレリン処理 | 種なしぶどうにするため溶液に浸す。 |
19. 防除7 | |
20. 摘心 【6月下旬~7月中旬】 |
枝を適当なところで切り、枝の成長を止める。 |
21. 防除8 | |
22. 副梢管理 【6月下旬~9月中旬】 |
副梢(脇芽)を切り落としさらに枝の成長を止める。 |
23. 防除9 | |
24. 草刈4 【4月~11月】 |
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25. 摘房 | 適正な房数にしてぶどうの品質(糖度・色)をあげる。 |
26. 摘粒 【7月中旬】 |
粒を間引いて1房の粒数を適正な数にする。 |
27. 袋掛け 【7月中旬~7月下旬】 |
防水、防虫のため。 |
28. 防除10 | |
29. 防除11 | |
30. カラス除け糸張り | 棚の上に糸を張り巡らす。 |
31. 周囲ネット設置 | 鳥獣害、防風対策。 |
32. 防除12 | |
33. 草刈5 【4月~11月】 |
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34. 電気柵設置 | ハクビシン対策。 |
35. 防除13 | |
36. 収穫 【8月下旬~9月上旬】 |
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37. 草刈6 【4月~11月】 |
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38. 周囲ネット撤去 | |
39. 電気柵撤去 | |
40. 防除14 | |
41. 草刈7 【4月~11月】 |
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42. 剪定 【11月中旬】 |
来年のために不要な枝を切る。 |
全てが手作業 地道に手間を積み重ねて
ご覧のとおり、防除と草刈りを除くとそれ程多くの手間があるわけではありません。しかし、草刈りと防除以外全てが人間の手作業であり、房の数だけ行う必要があるということです。ぶどうを育てるために一番必要なのは、特別な道具や技術でも、知識や経験でもありません。「やる気と根気」です(笑)。
面積は東京ドーム1個分、房数3万房強の汐路ぶどう園では毎日同じ作業を1ヶ月連続で、なんていうことも。
また、汐路ぶどう園では年間10回程度の防除に「スピードスプレーヤー(通称SS)」と呼ばれる機械を使用しますが、ご家庭では結構難易度が高い。雨に当たると病気になりやすいぶどうを守るための防除ですので、雨を防げればOK、ビニールハウスや雨よけの屋根を設置するなどができれば、防除は最小限でよいかもしれません。
果樹類のなかでもひときわ細やかな作業が多く、時間と手間のかかるぶどうですから、実りを迎えたときの喜びもひとしおです。果実と向き合い、かけた手間と込めた愛情は「美味しさ」となって返ってきます。
ご家庭でぶどうを育てられている方、普段よりひと手間ふた手間余計にかけてみてください。ぶどうを育てた経験のない方、ぜひ汐路ぶどう園で体験してください。心からの「美味しい」に出会えることでしょう。
作業の詳しい説明はまた別のお話しで。
汐路ぶどう園の看板品種ピオーネ。大粒でさわやかな甘みが特徴です。
摘粒の手ほどきを受ける印刷会社社長。
見えるところ全部がぶどう園。ここに何万房ものぶどうが生る。