新潟県産コシヒカリの一等米比率が低下!? 等級による食味の違いはあるのか

新潟県産コシヒカリの一等米比率が低下!? 等級による食味の違いはあるのか

異常なほどの猛暑と渇水に見舞われた2023年夏。人間にとって過酷な気候は、稲の生育にも大きな影響を与えました。
収穫期を迎えて、メディアでは「一等米比率過去最低」や「品質が大幅に低下」などが報じられるようになりました。米の品質の善し悪しを決める「農産物検査」の結果によるものです。さらに「作況指数全国最低」とも報じられ、2023年新潟県産コシヒカリは大打撃を受けています。


作況指数と農産物検査 量と質の指標

作況指数と農産物検査。消費者の皆さんには耳馴染みのない言葉かもしれませんが、豆知識として、ぜひお読みいただければと思います。普段食べているお米が少し違って見えてくるかもしれません。


作況指数とは

「作況指数」とは米の収穫量に関わる数値、いわゆる「たくさん収穫できた、少なかった」を表すものです。基準面積(10a)当たりの過去平均収穫量を100として、当該年収穫量の多少を算出。100を上回ればたくさん収穫できた、下回れば少なかったとなります。
稲に限らず多くの農作物は気象条件により収穫量が変動するもの。毎年違う気象条件に合わせて、積み重ねた知識と経験をもとに、日々こまめな管理を繰り返すことで、変動差を少なくしています。


農産物検査とは

「農産物検査」は資格を有する検査員が米の外観により、米の品質に等級(一~三等級、規格外)を格付けする検査、いわゆる「米のきれいさ」を表すものです。
検体の米粒(整粒)のなかに、健全に生育しなかった粒(不整粒、未熟粒、被害粒)が混在する割合(整粒歩合)により等級が決められます。整粒歩合は70%以上、以下60%以上、50%以上、50%未満の4段階に定められ、この割合を検査員が見極めて等級を格付けしていきます。生産者は、生産量(出荷量)とのバランスを考慮しながら粒の大きさや色で選別し、上位等級の格付けを目指します。(格付けのみを考慮すると出荷量が激減する可能性もあります)


等級低下の要因は

作況指数は「量」に対して、農産物検査は「質」に対しての指標です。2023年のコシヒカリが「質」を大きく下げることになった原因は猛暑と渇水による高温障害。米粒が白く濁る未熟粒(白未熟)が発生します。この未熟粒の混在割合が多いため、ほとんどが二等・三等の格付けとなってしまいました。


等級の差と食味の関連性

その状況を受け、新潟県の各関係機関は「等級による食味の変化はありません。」とイメージによる買い控えや価格下落、他県産への買い替えなどを避けるため「変わらぬ美味しさ」をアピールしています。

ですが、果たしてそれは真実なのでしょうか。

味は本当に変わらないのか

農産物検査は外観(見た目)で等級を決めるものであり、食味を保証するものではありません。しかしながら侮るなかれ。未成熟な粒はあくまで未成熟。しっかり成熟した粒に比較して食味も食感も劣ると考えられます。

白未熟粒は割れやすく水分も吸収しやすいため、炊飯時の炊きムラや食感など、少なからず「美味しさ」への影響はあるでしょう。
余談ですが、弊社の物好きなスタッフが選別されたあとの未成熟粒だけのお米(規格外)を食べてみたそう……美味しくなかったそうです。

私たちが一等米と二等米を食べ比べても、正直、味の違いはわかりません。しかしながら、整粒歩合に10%の差、未熟米が10%多く含まれるという事実はあるわけで……。味が「変わらない」のではなく、味の違いに「気づけない」という表現が正しいのかもしれません。


お米選びへの等級の影響は

高温障害による品質低下は、主に「米」として、見た目も重視しながら販売するお米屋さん、小売店などの流通業界に大きな影響を及ぼすもの。
「味」を重視する消費者にとってはさほど大きな問題ではないかもしれませんね。とは言え、僅かながらも未成熟な粒が多い二等米より一等米を選びたいという心理がはたらくことも十分理解できますが、実際にお店で販売されている精米では、何等級のお米かを知る術がないのも事実です。(生産者さんから直接購入する場合は教えてくれるかも……)

消費者の皆さんには「ご自身の味覚を信じて、美味しいと思ったお米をお選びいただくことが一番の口福」と、お伝えしたいです。


最後に

生産者の独り言としてお聞き流しください()

一等米と二等米は流通価格で1,000円/60kgほどの価格差があります。消費者にとっての価値「美味しさ」に変わりがないのなら、価格差は必要なのか。(もちろん外観のきれいさも重要な価値ではあると理解しているつもりです)

異常ともいえる猛暑は今年で終わりとは限りません。来年も再来年も、その先もずっと続くかもしれません。暑さに強い品種への改良の声も出始めています。
今年の猛暑がもたらした「過去最低の一等米比率」を契機に、計り知れない努力と手間が実らず、不運にも二等米、三等米と格付けされた生産者さんの苦労が報われ、日々の暮らしが少しでも明るくなる未来が見たいな、と思っています。


2023年9月29日付け新潟日報紙。大々的に報じられました。


コメの等級が低くても……。


上段が一等米、下段が二等米。


選別後のきれいなお米。


選別ではじかれた不良米。