あぐり通信 Vol.02(2024.02.15)

あぐり通信 Vol.02(2024.02.15)

冬のあいだの大事な仕事

「冬は何をして過ごすの?」と、よく聞かれます。日本海に面した冬の新潟は、お日さまも滅多に顔を見せず雪や雨で畑も乾かず、作物の栽培には不利な地域。疑問もごもっともです。が、冬の農閑期だからこその作業や業務、結構多いです。ビニールハウスでの葉物野菜栽培に加え、前シーズンのデータ整理や分析、春からの栽培計画、施設のメンテナンスなどなど。なかでも欠かせないのは「くん炭づくり」です。あぐりいといがわの看板商品「樹熟金線トマト」は土を使わずに育てます。土に代わりトマトを育むのはくん炭、米のもみ殻を炭にしたものです。11月、山と積まれたもみ殻は市野々からトマトハウスへ運ばれます。400袋近いもみ殻は、専用の窯で3か月かけて全てが炭に。シンプルな構造ながらも「灰にならず炭になる」優れものの専用窯は、炭になるまで一昼夜、できる量も限られるため、日々コツコツと同じ作業を繰り返します。寒く汚れる作業を担当する若手二人は、塵と埃で顔も鼻の穴も真っ黒にしながらの奮闘です。こうしてできたくん炭は少しずつハウスに敷き詰められ、トマトの植付けを待ちます。トマトの収穫後はキュウリや葉物野菜を育み、役目を終えて田んぼに撒かれて土に還る。そしてまた米を育むチカラとなる。私たちが育てる作物の多くがこの循環から生まれている。くん炭をつくる二人の真っ黒な顔を手を合わせて拝みたくなるほど、冬の間の大事な大事な作業です。


できあがったくん炭を窯から出します


糸魚川の厳しい冬 ~除雪編~

「東京都心でも警報級の大雪」と報じられた先日。「早めに帰ります」や「家に籠ります」といった、やや自嘲気味なメッセージが届きました()。雪に慣れない地域では賢明な判断ですね。平野部でも積雪が1mを超えることがある糸魚川。日常を過ごすために「除雪」は欠かせません。車社会の田舎では生活道路の確保が最優先で、出勤時間や登校時間に間に合うように、夜も明けぬうちから行われる除雪。多い時には日中も夕方の帰宅時間も……私たちの日常は、除雪のおかげで保たれます。が、私たちにも「雪の塊りが塞いだ車庫や駐車場の出入口の確保」という出勤前の重労働が待っています。足で蹴っ飛ばそうものなら捻挫は必至、車も無事では済まないほど固くてでかくて重い雪の塊りは強敵です。住宅街では雪の捨て場もなく十数m先まで雪を運んで往復。出入口が確保できた頃には、再び布団に入り「休みます」と電話したくなる()。車に積もった雪や道路までのアプローチもきれいにしてようやく出勤です。この一連の作業がない雪は「降ったうちに入らない」……かも。車にはスコップやスノーブラシ、家にはスノーダンプ、小型の除雪機まで備えて過ごす冬は、この記事が皆さんのお手元に届いたもうしばらく後、2月下旬まで続きます。少なくても2mと豪語する市野々でさえ1mほどの少雪ですが、いつか「除雪体験ツアー」やりたいと思っています。「雪への耐性」、身につけてみませんか()


今期ほぼ出番なしの除雪機、スノーダンプ、スノーブラシ


節分には落花生をまくって、本当!?

2月3日は節分。皆さん、豆まきはしましたか?糸魚川では、多くの家庭で大豆ではなく殻付きの落花生をまきます。北海道や東北、九州の一部で落花生をまくようで、①雪国では外にまいた豆を拾いやすい。②殻があるので衛生的で、まいた後でも食べられる。③九州には落花生の産地があり、大豆より安価だから。といった理由があるようです。あぐりいといがわでは、昨シーズン「おおまさりネオ」という品種の落花生の栽培に挑戦しました。一般的な落花生の約2倍の大きさが特徴の品種なのですが、残念ながら本来のサイズには届かない「こまさり」といった成績でした(泣)。今シーズンも、より良い品質と収穫量を目指して再チャレンジします。茹でて食べると甘さが引き立つ「おおまさりネオ」。11月頃収穫予定です。どうぞ楽しみにお待ちください。


収穫直後の落花生。洗って乾かします。


編集後記

初めまして、主に事務と接客担当の山内です。友人に紹介してもらい入社。聞きなれない農業用語やマニュアル車の運転に苦戦しながら、今年で14年目になりました。今は、接客中に口走る糸魚川弁を隠すのに苦戦中です()。私が言い出しっぺの「あぐり通信」は無事、第2号を発行できました。「作文」は中学校以来で得意ではありませんが、私たちの日常など、ありのままをお伝えしていければと思っています。今年は暖冬でもうフキノトウが顔を出しています。春恒例の山菜セットの発送まで我慢していてほしいのですが……。(山内)