農業はサイエンスだ!
農業には「サイエンス(生物学)」の素養が必要です(何をいまさら(笑))。作物は生き物、育つために様々なメカニズムがあります。毎年変わる気象や環境下、一定の品質を保つ作物を育てるためには「作物(生物)のメカニズム(生理)の理解」、すなわち生物学が欠かせません。作物には「高温障害」といわれる生理障害があります。適温を超えると健全な生育ができなくなります。私たちが育てる米、トマト、ぶどうにもそれぞれの障害が発生します。人間でいう熱中症がイメージしやすいでしょうか。ぶどうの場合、その障害は粒の色に影響します。高温になると色成分(アントシアニン)の生成が阻害され、黒や紫など本来の色になりませんが、「環状剝皮(かんじょうはくひ)」という対処技術があります。光合成でつくられた色成分は、果実を含む樹全体に送られますが、樹には不要な色成分を送る管を遮断することで、果実に集中させることができます。ぶどうの生理を巧みに利用した、まさにサイエンスです。思い描く理想の実りを実現するためには生理を理解し、コントロールすることが必要です。日光や水など自然の恵みはもちろん欠かせませんが、決して「自然の産物」ではありません。田んぼや畑、人の手が造った人工物のなかで、創意工夫を凝らし、ときに自然に抗って、育てあげた作物もまた「人工物」と言えるのではないでしょうか。「気象や環境を言い訳にしない」。心意気とともにお客さまへの責任と肝に銘じています。地球沸騰化時代と言われる昨今、それに屈しないために、生物学を理解し糸魚川の地に適した栽培を目指します。
表皮付近、下部へ向かう管を遮断したぶどうの樹
中学生がキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
7月末、学生たちは夏休み。近年の夏休みは学外での学びの時間でもあるようです。あぐりいといがわに市内の中学2年生3人が職場体験にやってきました。受け入れ数日前から開始した田んぼの電気柵設置。人手も体力も気力も足りず、暑さに悶えながら猫の手も借りたいと嘆いていたところに彼らが登場。猫の手どころか体力おばけたちに助けられ無事に作業を終えることができました。現在進行中の市野々ニンジン2万本計画の約8千粒の種まきも手伝ってもらいました(発芽も確認!)。体験の職場は自分で選ぶそうで、農業に興味をもち自分なりの目的をもっての体験でした。教わった作業を進めるなかで自主的に考え、より良い方法や指示されたこと以上にできそうなことを探して見つける姿に感動しました。3人ともすでに立派な社会人です。彼らのプロフィールには「どういった心構えで働いているか」「どんな作物がどうやって栽培され、その過程で大切なことや大変なことは何か」「いつもおいしいものが食べられるありがたさや食に対する感謝」を学びたいと書かれていました。わずか三日間の体験でしたが、社会の一員として働くことの楽しさに気づいてくれたこと、農業のやりがいに触れてもらえたこと、大切な青春の思い出に私たちも参加させていただけたこと、嬉しいことが山のようにありました。この体験を通じて、彼らが学びたかったことへの回答が得られていれば大変うれしい限りです。「とっても楽しかったのでこれからもあぐりいといがわを続けてほしい。この事業所にして当たり!」との言葉はわたしたちの宝物になりました。
オレたち、体力おばけ。頑張ったゼ!!
鳥獣との戦いに終わりを告げる
カラスとハクビシンとの戦い。ぶどう園では長年、頭痛のタネでした。その戦いに終止符を打つべく「上も下もネットで囲う」を実行、寸分の隙もない(と思われる)防止策が完成しました。この策のポイントは「敵の侵入を許さない」「人も車も出入り可能」「設置撤去が簡単」の3つ。一つめは「追い払う」から「入れない」への転換。今までは嫌がるもの(音や匂い、障害物)を設置していましたが、そもそも「入れない」のが一番効果的です。2つめは「合理的」。鳥獣ばかりか人も入れないことは本末転倒。管理のための人の出入りは自由になりました。そして3つめ、最も重視したことが「省力」です。側面のネットは留め具の取り外しのみ、天面のネットはカーテン式で開閉、枠組みは常設という簡単設置撤去を想定して設計しました。……が、ネットの特性を見誤り開閉できず。改良が必要です(笑)。とは言え、毎日憂鬱だった収穫時期の情緒が安定しました。数々の失敗の末に辿り着いた今回の対策は、被害防止はもとより、経済性、合理性、省力性に基づいたクリエイティブなデザインだと自負しています。私たちの夢が鳥獣害対策の進歩に繋がると信じています。
今のところはオリジナル。いつかスタンダードに!
編集後記
先日、20年ぶりに開催された高専時代のクラス会に参加しました。化学系の物質工学科という学科であったため、農業に携わっていることを伝えると旧友たちは驚いた様子でしたが、81歳の恩師は素直に理解を示してくれました。先生は食料自給率の向上と環境保全を身近な地域から実現するため、化学の目線からではなく自らの実践経験を切り口として普及活動をしているとのことでした。活動の場所は違いますが、私も糸魚川での活動の幅を少しずつ広げていければと思いました。久々の再会で気持ちもうるおい、秋冬作業に向けての良いスタートがきれそうです。(西連地)