あぐり通信 Vol.15(2025.03.14)

あぐり通信 Vol.15(2025.03.14)


屋根雪下ろし、やるぞー!!

2月中旬、暦の上ではすでに春を迎えたというのに、春はどこにいるのか。未だ真冬のような空から降る雪は、あっと言う間に一面埋め尽くしました。私たちがお米を育てる市野々では2.5メートルの積雪(市野々ではアベレージ)。たっぷり水分を含んだ重たい雪にそろそろ建物が限界、屋根と柱の「ミシミシ」という悲鳴が聞こえてきそうです。幸運にも晴れた青空の下、いざ、屋根雪下ろし決行です。道路脇の雪の壁をはしごで登り、屋根にもはしごで登り、自分の立つスペースをこじあけてようやくスタート。もう息があがります。2mを超える雪は2段掘り。上から徐々に崩して屋根下へ放り投げるのですが、重い雪と一緒にスノーダンプまで落としてしまうのではと言う不安と、足を踏み外すのではという恐怖で、腰は引き気味の無様な格好。きっとベテラン組の邪魔になっていたのでしょう()。汗だくになりながら続けること一時間。なんと、まだ半分!気が遠くなる作業です。さらに一時間、ようやく終了です。下ろした雪が屋根と同じ高さにまで達し、量の多さを実感しました。腕はプルプル、足腰に乳酸が溜まりグッタリした帰りの車中は全員無口に。「今夜のビールは旨いだろうなぁ」というため息交じりのささやきが2回だけ聞こえました。


屋根雪下ろし、ビフォー


屋根雪下ろし、アフター


郷土料理~おぼろ汁~

朧(おぼろ)にかすむ月のように……その名の由来が、なんとも風情のある「おぼろ汁」は、おぼろ豆腐を使った糸魚川地域の郷土料理です。その昔、豆腐がとっても贅沢品だった頃、冠婚葬祭のもてなしの主役は豆腐だったそうです。豆を煮てつぶして絞ってと、手間をかけてつくるお豆腐が、お客様への感謝のしるしだったのでしょう。さすがに今は、豆腐からつくることはほぼないでしょうが、それでもお祝い事や法要、お祭りの定番料理です。子どもの頃から慣れ親しんできたこのおぼろ汁について、つい最近まで大きな勘違いをしていました。ひとつは手抜き料理だと思っていたこと(あくまで個人の見解です)。冠婚葬祭を自宅で行っていた頃、食卓に並ぶのはどれもこれも時間と手間がかかるご馳走ばかりです。拵えるひとたちが少しでも楽になるように、汁物だけはサッと作れるように、と考えたとばかり。が、まったく逆でしたね。(ダシ汁・醤油・適量の水溶き片栗粉があれば簡単にできます)。もう一つは郷土料理だったこと。全国どこでも一般的な料理だと思っていましたが特定の地域にしかないと知り、「おぼろ豆腐、逆に汁以外でどうやって食うんだよ!?」と、思わず知見のなさがバレてしまいました。勘違いだと知ってから「おぼろ汁」の権威は劇的に回復、今や農業体験の定番お昼ご飯となり、都心部からの参加者にも大好評です。リアルな田植えと郷土料理が堪能できる、あぐりいといがわならではの農業体験。ご興味のある方はぜひ!(美味しさに感激した参加者にレシピを伝授。水溶き片栗粉の「適量」を誤り「あんかけ」に。適量は難しい……。)


水溶き片栗粉が「適量」のおぼろ汁


今年の芽傷処理は大変でした

どう見ても膝上はある雪に車は立ち往生。車を乗り捨て、かんじきを履いて、息も絶え絶えに歩くこと五百メートル……そうまでしてぶどう園にたどり着かなければいけない理由は、「芽傷処理」という作業です。専用のハサミ(その名もメデール)で枝に深さ2ミリほどの傷をつけることにより、発芽が促進されてたくさん芽がでるようになるのですが、寒くても、雪があっても、たとえ雪に埋まっていても、ぶどうが眠りから覚める前にやらなければならないのです。時期を逃すと、芽がでません。なんとか到着したぶどう畑に待ち受けるのは、つけるべき傷が50カ所ほどもあるぶどうの樹百本超え。まず心が折れました。そして追い打ちは、やっぱり雪。普段は腰ほどの高さにある枝は雪のせいで足元にあり、雪上でしゃがみながらの横移動は下半身にとてつもないダメージを与えます。今年の芽の出方を左右するため、傷を入れる場所を間違ってはいけないと慎重に進めていたこともあり、想定以上に時間がかかり、終わるころには身も心もクタクタでした。たくさん芽がでてくれれば、この苦労も報われるのですが……。どうぞ芽吹いてください!


メデールで地道に


足元、というか雪のなか


編集後記

相次いだ記録的な寒波が、茨城県出身のわたしに日本海側の本気の冬を教えてくれました。2月末にまいたソラマメの種は、2週間の時を経てようやく芽を出そうとしています。雪に隠れていた田んぼも姿を現し、初物のフキノトウが採れはじめ、多くの方が春の訪れを感じております。が、市野々集落の田んぼはずーっとずっと雪の下。過去には5月の連休頃まで雪が残っていた年もあるそうで。春作業に遅れがでないように雪解けが進んでほしいものです。(西連地)