代かきって、何?
タイトルの言葉は、田植え体験に参加された方の一言です。ハッと我に返りました。私はつい、業界用語を連発していたのです(まったく、穴があったら入りたい)。八十八の手間があるといわれる米づくり。田植えや稲刈りはよく知られていますが、その他の作業は触れる機会も少なく、言葉も聞き慣れないのが普通です。代かきとは、田んぼを「ドロッドロ」の状態にする工程です。田打ち(耕す)後、田んぼに水を入れ、代かき専用の作業機「ハロー」をつけたトラクターで作業します。大きな土の塊を水で攪拌して細かくしていくのです。この代かき、米づくりの数ある工程の中でも、最もテクニカルで、最も重要な作業の一つなのです。米づくりにとって、水は命です。一定期間、田んぼに水を張り続けなければなりません。その水を安定して保つために必要なのが代かきです。特に注意が必要なのが「水漏れ」。その多くは、あぜ際から起こります。あぜ際は丁寧に、かき残しのないように、慎重にトラクターを走らせます。また、田んぼ表面が平らになるよう「ハロー」の高さもこまめな調整が必要です。熟練のオペレーターが仕上げた田んぼは、水を張るとまるで鏡のよう。水漏れも凸凹もなく、見惚れるほど美しい状態になります。ところが、ひよっこの手にかかると、走れば走るほど、逆に凸凹がひどくなる(涙)。何度もやり直したくなりますが、いつまでも代かきをしているわけにはいきません。「植えてくれー」と苗が叫んでいます。代かきに求められるもの。それは「慎重さ」と「緻密さ」。そして最後に、もう2つ。「諦め」と「妥協」も加えておきましょう(笑)。
きれいな仕上がりには、水加減が重要です。
虫たちと築く持続可能な畑
先月号「畑の通路でムギ栽培」の続編になりますが、今回は野菜栽培に欠かすことのできないある虫とその活躍について、栽培の様子を交えて紹介します。その虫は「ヒラタアブ」。彼らは花粉や蜜を食べる行動の中で、知らず知らずの間に野菜や植物の受粉を助けます。また、その幼虫は食欲旺盛で野菜の害虫とされるアブラムシやカイガラムシを食べてくれます。そんな働き者を、ちょっとした工夫で呼び込みやすくすることができるのです。……もうお気づきですね!。そう、通路でのムギ栽培です。4月の終わりにまいたエンバク(オーツ麦)は、この時期になるとひざ丈くらいに成長し、飛んできたアブラムシをキャッチする障壁(バンカープランツ)となります。幼虫のエサとなるアブラムシがいて、果実をつけるために花を咲かせているソラマメ、ズッキーニ、カボチャがそばにあり、自身の隠れ場所にもなる通路のムギは彼らにとっては快適な住処です。結果的に、野菜のアブラムシ被害は抑えられ、ズッキーニやカボチャなどは受粉を助けてもらい、良い果実を実らせることができます。こうして虫たちとともに栽培した野菜は、先日の田植え体験の昼食のテーブルに並びました。採れたてのパリッパリレタスのサラダバーとハクサイの浅漬けは、メイン料理「いちのまいのおにぎり」にぴったりのお供。参加された皆さんの「美味しい!」の声が飛び交い、おかわりしてくれるお子さんの姿も見られ、私たちスタッフも大変感激しました!。いつでもできる農作業体験と、あまり知られていない虫たちの活躍があって得られた食材を通じて、ファンの皆さまとの交流を深められたひとときを過ごすことができました。
エンバクの中でそっと身をひそめる彼。
初オペレーションセカンド
トラクター初挑戦を果たしていた2年目スタッフは、田植え機の人生初ワンオペレーションにも挑んでいました。前号で紹介した「田打ち」を終えると、「代かき」を経て、稲作の花形「田植え」に入ります。田植え体験では田んぼに入り、一株ずつ手で植え付ける方法も行われたりもしますが、農家は田植え機を使用します。広大な面積を楽に早く植えることができる田植え機はとてもありがたい存在です。さて、2年目スタッフが生まれて初めて田植え機に乗った感想は、「楽しいぞ?」です。トラクターと違い、田植え機には屋根や壁がありません。田んぼを走り抜けながら、爽やかで澄んだ市野々の風を浴び、草木の香りを感じ、鳥のさえずりを聞けるのです。綺麗に植え付けるためには田植え機をまっすぐ走らせることが大切。曲がらないようにハンドル操作に集中しつつ、五感全てで雄大な自然を感じていました。吸い込む空気は爽快で、目の前の景色は広々と美しい。田植え機の操作はシンプルで理解しやすく、想像よりも怖くなかったので、とても充実した初挑戦となりました。そして今回も、とあるスタッフが(苗継ぎをしながら)私の勇姿を写真に収めてくれました!思いのほか楽しかった田植え機、苗継ぎよりも好きになりまし(笑)。何度も乗って上達したいです!
フォトbyとあるスタッフ
編集後記
だんだんと暖かくなるどころか夏日が続くようになり、ポロシャツを着て汗をかきかき作業をする日々です。野菜の出荷が始まるとともに、あぐりいといがわの公式LINEを開設いたしました。日々の野菜の出荷情報をご確認いただけます。何か新しいことを始めると気持ちもシャキッとしますね。日進月歩!日々成長です!(松澤)