笑顔満開!夏の実習録
「市野々集落に、未来を共に描いてくれる若き仲間がやって来ること」。その夢が、ついに叶いました。東京農業大学から、インターン学生がなんと4名も到着。これは、夢に見た一歩というより、希望に向けた大きな前進です。東京農業大学 地域創成科学科では、「農山漁村インターンシップ」を科目として導入しています。この取り組みは、地域における仕事や文化のつながり、自然と共存してきた人々の営みを理解することに加え、就業体験を通じて学生が自らの適性を発見し、職業観を深める重要な教育の機会と位置づけられています。農業を通じた活動に関心を持ち、定期的に訪れてくれる仲間が増えることを願っていた私たちにとっては、まさに渡りに船。もちろん、ちょっとした下心もあります。訪れるたびに草刈りを手伝ってくれたら最高じゃない?なんて(笑)。第一陣として市野々にやって来た学生は、炎天下の中で手にマメをつくり、立往生した軽トラを押し、田んぼで長靴が脱げるといった5日間を経験。それでも「良い意味で裏切られました」と笑顔で語り、「今までで一番充実した夏の始まりでした」と言ってくれました。作業の効率化や鳥獣被害への対策なども一緒になって真剣に考え込む姿に、まるで頼もしい相棒ができたような気分です。「これまでは講義で知識を得るだけで受動的だったけど、生産者の声に耳を傾け、実際の作業を通じて能動的に考え、伝えることができた。」と語ってくれたことが、非常に印象的でした。今回のインターンシップが彼にとって有意義なものだったと実感できた瞬間です。これから訪れる残り3名の学生にも大きな期待を寄せています。近い将来「東京農業大学市野々キャンパス」で教壇に立つ自分を妄想しながら、暑い暑い夏を乗り切ります。
全員「ナベ」。奇跡の4ナベ。
農作業中の暑さ対策
夏の暑さが本格化し、新潟県内や糸魚川市内にも連日、熱中症警戒アラートが発令されています。炎天下でも屋外での作業が余儀なくされる職種、建設現場などでの熱中症対策がメディアでもよく取り上げられています。私たち農業従事者も、様々な熱中症対策をしています。建設業と農業の現場の違いは、植物や水源の有無でしょうか。田んぼや畑など私たちのほ場は、周りが木々に囲まれているため、木陰で休むことができます。木陰に吹き込む風はエアコンほど冷えてはいないものの天然の扇風機といえます。さらに、田んぼの横の木陰には用水路もあり、絶好の休憩スポットです。私たちがお米を育てる市野々集落の農業用水は、天然の湧水を水源としていて、真夏でもキンキンの冷水が流れているからです。木陰で休みながら、「足湯スタイル」で長靴のまま用水路に足を入れても、足がとてもひんやり冷たくなります。「作業をして木陰で休む」を繰り返すのが農家スタイル。もちろん、こまめな塩分・水分補給も欠かしません。また、建設現場などでは夏の標準スタイルとなった空調服が、スタッフ全員に一着ずつ支給されました。「空調服」と検索してみてください。小さい扇風機がくっついている暑さ対策用作業服です。猛暑の外作業はこの空調服にも大いに助けられています。今現在、スタッフから熱中症は出ていませんが、立っているだけでも倒れてしまいそうな暑さのなかでの作業。作物と同じくらい、私たち自身の体調管理も大切だと実感する日々です。
絶好の休憩所で小休憩。
ハクビシンの哲学に敗れた夏
昨年の夏、ぶどう園で繰り広げられた「全面ネットで囲う作戦」。その効果は、鳥も獣も手も足も出ず、被害ゼロという快挙。「これで勝った!」とガッツポーズを決めたものの、冬が来るとネットの撤去、春に再設置という重労働が待っていました。それはもう、ぶどうより腰が収穫されそうな勢いでした。そこで今年、新たな園地ではコストと体力を考慮し、別の作戦を決行。その名も「1房ずつメッシュ袋で守り抜く作戦」。使うのは、毎年米の種もみが入ってくる丈夫なメッシュ袋。紙と違って破れないし、再利用もできる。手間はかかるけど、エコで経済的。これは名案だ!と鼻高々に袋をかけて回りました。ところがその鼻、ぶどうの色づきとともにポキポキと音を立てて折れていくのです。袋の上からつつき回された痕跡。犯人は、ハクビシン。「食べられなければ諦めるしょ?」という人間的な発想は、彼らには通じません。なんと、「食べられないなら、せめて汁だけでも」という哲学的な行動に出たのです。メッシュ袋の上からぶどうを触り倒し、紙袋を破り、果汁を舐めまくるという暴挙。その執念、もはや尊敬の域。「悔しいけど、努力賞はあげる」と思いました。幸い今年は試験的な収穫で、被害は限定的ですが、このままでは、ハクビシンのグルメツアーに全滅させられかねません。そこで、全国の製紙会社の皆さんにお願いです。どうか「ヒト以外には破れない紙袋」を作ってください。夢と希望と果汁を守る、そんな紙袋を!
食えぬなら、舐めてやる!?
編集後記
今、待ちに待った雨が降っています。しかも、かなりの大雨。ひと月以上ぶりの恵みにホッとしつつも、災害が心配されるほどの雨はいらない。わがままな人間の思いなど知る由もない天気の神様の気まぐれに、何事も「いい塩梅」が大事だなと、つくづく思います。何はともあれ、恵みの雨です。(青木)