あぐり通信 Vol.28(2026.04.15)

あぐり通信 Vol.28(2026.04.15)


米作り、最初の手間とは?

山々の雪も溶け始め、いよいよ米作りのシーズンがやってきました。「米」という漢字は稲作に八十八の手間があることからできたと言われていますが、あぐりいといがわで一番にやる手間は「浸種(しんしゅ)」です。簡単にいえば種もみを水に浸ける事です。

「なんや。そんな難しないな。(関西弁)」
米作り一年目当時の私はそう思っていました。

しかし、そこは農業。手間のかからない作業はありません。浸種の目的は芽出しの準備であり、水を種もみに吸わせる事により発芽のスイッチが入ります。十分に吸水した種もみは発芽時のエネルギーが高まり、生育が良くなります。この浸種の目的をうまく達成するためには、丁寧な水管理をしなくてはなりません。浸ける期間は水温✕日数の「積算温度」で決まり、種もみは積算温度百度前後で浸種をやめるとうまく芽出しができます。水温が十度なら水に浸ける期間は十日間前後となりますが、気温が高くなるにつれて水温も上がりやすくなるため浸種の期間は短くなります。水温が高すぎると種もみの呼吸が活発になり酸素不足が発生するほか雑菌の繁殖リスクが高まり、水温が低すぎると種もみが水を吸ってくれないため、浸種中は適切な水温に維持することが大切です。

よく晴れた温かい日は春を感じられ気持ちの良いものですが、水温が上がりやすいため、私にとっては油断できない時でもあります。酸素不足で発芽障害や腐敗が生じるので定期的に水の交換も行います。
浸種を始めるタイミングも大切です。浸種の期間が長すぎるとすじまき(種まき)前に発芽してしまい短いと発芽スイッチが入らず眠ったまま…...。

すじまきの日は作業計画で決まっているので、そこから逆算して予定をたてます。週間天気とにらめっこして気温をチェック。予報と勘を信じて実行日を決めています。豊作目指して一歩一歩確実に進めていきます。(稲作担当:鍋釜)


「芽出してくれよ」と願いつつ。


あっという間に二十年

二十年前、私の当時の上司、谷村建設土木部の部長から電話があり「明日終業時刻に本社まで来るように」とのこと。もしかしてリストラ?と意気消沈気味で翌日出向くと土木部長のみならず、専務(現糸魚川農業興舎社長)も同席で応接室へ。

恐る恐る着席すると「今春、農業の新会社を設立するので、そちらで頑張ってほしい」と伝えられました。リストラじゃないんだ!新会社立ち上げメンバーに選ばれたんだ!と安堵した一方、「米作りなんて経験無いし、私にできるのかな?」そんな心境もありました。

春になり市野々へ向かうと、師匠ご夫婦が満面の笑みで迎えてくださいました。そしてこう言われました。「一年間は付きっ切りで米作りを教える。ただし、二年目からは全てひとりでできるようになりなさい!学ぶ気の無い者に教える気は無い!」身体が震えましたし、おかげでメモ魔になりました。

そんな初めての米作りで一番困ったことは、師匠ご夫婦が農業興舎の作業について夫婦ゲンカを始めることでした。お二人とも興舎への指導にとても真剣で、二人の間に立ちすくむ私の頭の中は「これ、どちらの味方をすれば会社から褒められるだろう?」でした。

今でも師匠ご夫婦はお元気で、相変わらず満面の笑みで厳しい助言をしてくださいます。最初は東京ドーム半分ほどだった田んぼの面積も年々増加し、今では十倍ほどになりました。広大な田んぼの管理で、毎年毎年、春から秋まで目が回りそうな勢いで過ぎていきます。

会社設立から今日まで、ただがむしゃらに突っ走ってきましたが、あっという間に私も満六十歳になりました。生産係長の役職は後進に譲り、少し肩の荷を下ろした立場でこれからも「いちのまい」の栽培に邁進していこうと決意を新たにしているこの春です。(稲作担当:渡邉)


2006年の写真。師匠の指導を受けながら人生初稲刈り。


令和8年度「いちのまい米主プロジェクト」受付開始

いつも、いちのまいをご愛顧いただきまして、誠にありがとうございます。
皆さまからいただく嬉しいお声は私たちの励みになっております。

さて、今月から令和八年度「いちのまい米主プロジェクト」のお申し込み受付が始まりました。米主にお申込みいただくと、新米が収穫されてから一年間、毎月「いちのまい」がご自宅に届きます。さらに、通常参加費をお支払いいただくあぐりいといがわ主催の「いつでもできる農業体験」や、田植え、稲刈りの農業体験イベントに無料でご参加いただけます。さらにさらに、年三回糸魚川産野菜セットが届くオプションもございます。旬の恵みを産地直送の新鮮なまま食卓でお楽しみいただけます。

そんな「いちのまい米主プロジェクト」は私たちの使命「いのちとこの地をおいしくはぐくむ」の実現に向けた活動となっております。丹精込めて育てた農産物をお届けし、食べてくださるお客さまの心身を健やかにする。そして、農匠の技術を受け継ぎ、持続可能な農業で糸魚川の里山を守り続ける。これがあぐりいといがわの原動力です。
私たちと米主様とで、「いのちとこの地をおいしくはぐくむ」この活動に共感していただける方は、ぜひ詳細をご覧ください。お申込みをお待ちしております。 (広報担当:松澤)


↑ 米主プロジェクトの概要


編集後記

糸魚川でも桜が見ごろを迎えました。つまり、農閑期が終わるということでもあります。野菜苗の植え付けや、お米の種まきが始まり、トマトの苗もハウスにずらりと植わりました。農作業に追われじっくり桜を眺める余裕はなさそうですが、ふとした瞬間に見かける桜を、毎年少しだけ楽しみにしています。(沢田)

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