あぐり通信 Vol.29(2026.05.15)
Share
「イヤ」が原動力
「毎年一年生だよ」。私たちの米の師匠の言葉です。
その言葉が身に染みたのは2025年のぶどう栽培でした。種なしぶどうは、ホルモン剤(ジベレリン)溶液に、一房一房、「チャポン」と浸けていくことで生まれます。日を空けてもう1回浸けると、粒が大きく育つのです。ところが、ここ数年、思うほど粒が大きくならないのが悩みでした。粒を大きくする秘薬(フルメット)はあるのですが、これがまた、まあまあなお値段。二の足を踏んでしまいます。それでも背に腹は代えられず。覚悟を決めて、1回目にジベレリンとフルメットを併用しました。10日後、成果はお値段以上でした。そして迎えた2回目、落とし穴が待っていました。
――房がデカすぎです。
溶液を入れる専用容器はスタバのショートくらい。そこに房が入らない。数分後、2Lペットボトルの手製容器が誕生しました。ギリギリだけど房は入る。よっしゃっ!と漏らした声も消えぬうちに、こめかみに脂汗が伝ってきます。
――ペットボトルが重すぎです。
少し見上げる位置にあるぶどう。2kg近いペットボトルを頭の高さで維持し続けるのは、もはや筋トレ。いや筋トレ以上、苦行です。
やってみてわかる。師匠の言葉通り、一年生です。
今年もその時期が近づいてきました。もう苦行は懲り懲り。イヤです。
私たちのぶどう栽培は「人に優しい」を掲げています。汗もかきたくないし、腰も膝も曲げたくない。そんなぶどう園に筋トレは要りません。
さて。発想を逆にしました。2回目が済んでから急激に大きくなる粒と房。目の前が明るくなりました。秘薬の説明書にも、「使い方、合っています」と書いてあり……今年の挑戦が決まりました。やはり、毎年一年生です。
「イヤ」は私の原動力。イヤじゃなくなったときの達成感は得難いものです。もちろん、美味しいぶどうができたら、です。(青木)
彼女の左腕がプルプル震えだす
トマト栽培の常識を覆す「1株で2本分」のポテンシャル
4月6日に定植を終えたばかりの大玉トマトのツイン苗。その驚きの実力と、栽培の攻略ポイントをまとめました!
【ツイン苗ってなに?】
1つの株から主枝が2本伸びるように仕立てられた、いわば「トマト界の双子ちゃん」。苗の数は半分(1,200本)でも通常植える本数(2,500本)と同じ収穫量が目指せる省スペースの救世主です。
【ここがスゴイ!3つのメリット】
◎倍増のロマン:通常の1株の1.5〜2倍の収穫量!
◎お財布に優しい:単価は少し高いけれど、2苗買うより断然お得な高コスパ仕様。
◎タフな根性:病害虫や連作障害に強い「接木」も相まって、成長の安定感が違います。
【踏ん張りどころ!3つの注意点】
◎スロースタート:主枝2本に栄養を分ける分、初期の成長は少しマイペース。
◎手間はそのまま:芽かきや誘引をサボると、あっという間にトマトジャングル化。
◎ハラペコ注意:2本分栄養を食べるので肥料切れが早く、こまめな「おかわり(追肥)」が必須です。
【攻略の鍵は「V字バランス」】
上に向かって「V字型」に広げて主枝を伸ばしてあげるのがコツ。光と風をたっぷり当てることで美味しい実が育ちます。
もみ殻くん炭を土壌にし、養液システムで水やり・施肥を完全自動化している、サステナブル且つIT化に取り組むあぐりのトマト栽培。苗も「ツイン苗」にアップデートです。養液システム✕もみ殻くん炭✕ツイン苗の三重奏で、目指すは最高の収穫祭!トマトおじさんと「双子のトマト」の熱い格闘は、まだ始まったばかりです。(トマト担当:モリヤマ)
左:通常の1本仕立て苗 右:ツイン苗
「V字」に誘引
両立を目指して~春夏~
水稲と園芸を両立しながら耕作をし続けることこそ、糸魚川への恩返しになる――そう確信したのは、就農4年目の春でした。今ではそれが、この地で農業を続 ける自分の価値だと、はっきり言葉にできます。とはいえ、その道のりは決して平坦ではありません。
新潟県は有数の米どころであり、ここ糸魚川でも耕地の大半が水田です。先日、平野部の田植えを終え、いよいよ本格的な米づくりのシーズンが始まりました。これからの1か月は、水管理やあぜ道の草刈りに加え、山あいの市野々での田植えも控える、気の抜けない日々が続きます。
実はその前に、もう一つ大きな山場がありました。それが春夏野菜の植え付けです。
山間部の市野々は雪解けが遅いため、この時期は比較的早く雪が解ける汐路ぶどう園の一角を活用しています。
2月、深い雪の中でまいた種が芽吹き、畑の準備を進め、ようやく植え付けを迎えるのが3月末。植え付けはソラマメから始まり、ハクサイ、キャベツ、そして4月末ズッキーニとカボチャ、金糸瓜を植えてひと区切りついたと思えば、すぐに田植え準備へ。
――季節とともに移り変わる作業に追われながらも、日々の充実を実感しています。
一方で、糸魚川では野菜生産者の減少が続き、地域小売店の地元野菜売り場や学校給食で使う食材の確保が難しくなっている現状があります。水稲に特化した方が効率的で経営もしやすいのは事実です。それでも、地域の園芸をこれ以上縮小させたくない。だからこそ、水稲と園芸の両立を模索しチャレンジを続けています。
忙しさの中にも確かな手応えを感じながら、挑戦の日々は続きます。これからも温かく見守り、応援していただけたら大きな力になります。(サイレンジ)
編集後記
母の日に、娘からカーネーションの鉢植えをもらいました。ピンク色の花を沢山付けた可愛らしい鉢に、ハートのバルーンが刺さっています。派手だなぁと眺めながら、娘が幼稚園の頃工作でカーネーションを作って渡してくれた事を思い出しました。せっかくもらった鉢植え、枯らしてしまわないように慌ててネットで育て方を検索。「来年も咲きますように〜」今は枯らさない事に全集中!私にもできるかな?(山内)